曲率半径と平均曲率
楕円を描いている曲線は、短い区間を円で近似するようです。この円の半径が曲率半径で、その逆数が曲率のようです。
二階微分可能な曲線 の点 における曲率半径 R は、
で、 のときは、曲率半径 ∞ です。
楕円を、
と表すと、
maximaで微分して、
したがって、曲率半径 R の2乗は、
1.1
準拠楕円体上の1点における曲面の曲率を考えます。地表のある地点で、その点を通る鉛直方向の直線を含む平面で楕円体を切断します。断面は楕円で、切断する平面の向きによって曲率が変わります。その平均値が平均曲率だと考えられます。その逆数は平均曲率半径です。
方位盤は水平に置かれ、その地点の接面です。錘を下げて決まる鉛直方向は法線です。
法線を含む平面は法面で、法線と、方位盤の方向を示す直線で決まる面です。
この法面と楕円体の交線は、垂直截線と呼ばれるようです。方位盤の方位を示す目盛りは、垂直截線の一部です。
方位は様々な表現方法がありますが、真北から時計回りに360度まで測る「方位角」が共通の基準のようです。方位角は、その地点を通る経線と垂直截線の成す角度であり、経線が作る平面と、法面の成す角角度です。
測量法に基づいた「作業規程の準則」の付則「付録6計算式集」には、平均曲率半径として、 6,370,000 m がでています。また、公式が示されていて、緯度36度の平均曲率半径は、6371488.6206 m となります。
GRS80の赤道半径は、6,378,137 m です。極半径は、6,356,752.314140356 m となります。赤道は真円ですが、経線は楕円を描きます。
経線上では、赤道との交点で最も曲率半径が短く、極で最長となることは明らかです。式1.1によって計算すると、赤道で 6,335,439.327083874 m、極で 6,399,593.625864022 m となります。
極を通る経線はすべて同じ楕円ですから、極における平均曲率半径は、6,399,593.6259 m です。極以外の地点では方位角によって曲率が変わることになります。
「付録6計算式集」の平均曲率半径は、子午線曲率半径と卯酉線曲率半径の幾何平均です。
つまり、方位角0° と 90° の垂直截線の曲率半径の幾何平均です。
準拠楕円体は極軸に回転した回転楕円体なので赤道は真円です。赤道の曲率半径は赤道半径そのものです。子午線曲率半径と卯酉線曲率半径の幾何平均は経度に無関係に、緯度だけで決まります。どの地点でも、その地点を通る経線が最小の曲率半径となり、卯酉線が最大の曲率半径となることが前提のようです。
緯度±90°の極では、6,399,593.6259 m です。緯度0°の赤道上の点では、経線の曲率半径と赤道半径から、6,356,752.3141 m となります。この値は、極半径と同じ値のようです。
平面直角座標9系の原点は、緯度北緯36度、東経139度50分と定められています。
この地点に方位盤を置くことを考えます。真北を定めて。方位盤を水平に置きます。方位盤の中心を通る鉛直方向の直線は法線で、赤道面と成す角が 36° です。方位盤の南北の線は、東経139度50分の経線です。
したがって、東西の直線は、東経139度50分の経線に直交する卯酉線です。他の方位を示す直線も全て、法線を含む法面と、方位盤の交線です。
方位角は、その地点を通る経線が作る平面を基準として、法線の周りに回転する方面との成す角度で表されます。真北を0°として、時計回りに360°まで測られます。
全ての方位に対して、準拠楕円体の法面による断面が考えられ、それぞれ曲率半径があります。
準拠楕円体の中心から、東経139度50分の経線と赤道の交点へ向かう直線をX軸とします。準拠楕円体の中心から、自転軸の北の極へ向かう直線をZ軸とします。準拠楕円体の中心から、西経130度40分の経線と赤道の交点へ向かう直線をY軸とします。
卯酉線のイメージは、下図のようになります。地球は、ほとんど球ですから、経線の描く楕円を紙に書いても円にしか見えません。図は大きく強調したものです。
「卯酉線」に従って、平面直角座標9系の原点は、経度0°方向をX軸としたXYZ座標で、
(-3947708.577205533, 3332137.506016432, 3728191.675729482)
と計算されます。
|
平面直角座標9系の原点の経度を0°としたXは、以下のようになります。
|
あるいは、
|
式1.1に、この値を適用すると、曲率半径 6357482.4375 を得ます。平面直角座標9系の原点における、経線の曲率半径です。
準拠楕円体は回転楕円体なので、経線は全て同じ楕円です。平面直角座標9系の原点を通る経線を0°としても不都合はありません。これで、平面直角座標9系の原点を通る経線が作る平面は、XZ平面と考えることができます。
平面直角座標9系の原点Aは、
となります。
計算を簡単にしたいので、赤道半径を1として計算します。GRS80の赤道半径 aで割って、
a = 6378137
点Aにおける法線の切片(地軸Zとの交点)s は、
と表せ、法線は (0, 0, s)を通ります。
卯酉線が作る平面は法線を含み、、(0, 0, s)を含みます。また、XZ平面にある経線に直交するので、Y軸に平行です。したがって、任意のyに対して(0, y, s)を通ります。
、(0, 0, s)、(0, 1, s)の3点で決まる卯酉線が作る平面を、 とします。 maxima で、L、M、N、O を求めると左図のようになります。 |
回転楕円体は、
です。平面の式と、回転楕円体の式の連立方程式を解いて、卯酉線上の点の座標を4つ求めます。
まず、卯酉線と赤道面の交点2つを求めます。z = 0 として、x、 y を求めます。
次に、x = 0、z = s として、直線ベクトル(0,1,s)との交点を求めます。
maxima の表示はコピーしてRのスクリプトに貼り付けられます。
a=1、b=0.6 と強調して図示すれば下図のように描けます。
卯酉線を卯酉線の作る平面上で考えると、準拠楕円体が地軸を軸とした回転楕円体であることから、法線に対して左右対称です。卯酉線は、法線を短軸とした楕円です。 地球楕円体の比率で描くと、左図のようになります。地球楕円体は、ほとんど真球なので、法線が回転楕円体の中心を通るように見え、卯酉線と赤道面との交点と、卯酉線と法線とZ軸の交点を通るY軸と同じ方向ベクトルの直線との交点は区別できません。 オレンジ色の線は、卯酉線を、赤道面との交線を軸にXY平面まで回転したものですが、赤道と重なって図では区別ができません。 |
法線と赤道面のなす角が緯度なので、法線が作る平面を、赤道面との交線を軸に、緯度だけ回転してXY平面に重ねます。
|
卯酉線上の5点は回転によって全て z がゼロになります。点AはX軸上に移動します。
この5点で決まる楕円の式の係数から、楕円の標準形を求めます。
|
長軸 u$a をx軸半径、短軸 u$b をy軸半径として、横長の楕円を描けば、点Aの曲率半径は、x=0のときの値です。これに、赤道半径を乗じれば、地球規模の点Aにおける卯酉線の曲率半径になります。
|
緯度36°における卯酉線の曲率半径は 6385525.6607 m と計算されます。
緯度36°における方位角0°、90°、つまり経線方向と卯酉線方向の2つの曲率の幾何平均は、
6371488.620 m
となりました。単純平均は、
6371504.049 m
です。
緯度φ=36°における、経線方向の曲率半径は、
緯度φ=36°における、卯酉線方向の曲率半径は、
緯度φ=36°における、方位角α の曲率半径は、
緯度φ=36°における、方位角45° の曲率半径は、
また、「付録 6 計算式集」に従って、
ある緯度φ の地点をAとすると、地点Aにおける方位角α の方位線の曲率半径を計算します。
準拠楕円体は地軸の周りに回転した回転楕円体なので、等緯度の地点の状態は全て同じです。地軸をZ軸、回転楕円体の中心を原点、Aを通る経線の作る面をXZ平面、赤道面をXY平面として、普通のXYZ座標で考えます。
計算を簡単にするために赤道半径を1として計算します。
点Aの座標は、
方位線が作る、回転楕円体の切断面は、その地点を通る経線の作る面を、法線を軸に、時計回りにα回転したものです。
点Aを通る経線がXZ平面になるように座標軸を決めたので、経線による断面は左図のようになります。直線ASは法線で、点Sの座標は (0, 0, s) です。
点Aにおける法線は、(0, 0, s) を通り、方向ベクトル
です。 |
は、 なので、
です。したがって、
また、曲線 y=f(x) の点 Q(Xq,Yq) における法線の公式は、
のようです。
yをzと読み替えて当て嵌めてみます。
楕円、
の式をzについて解けば、
となります。点Qは第1象限にあると考えているので、正の式を採って微分すると、
A(Ax,Az) における法線は、
となります。切片は、
となります。
点 A を通る経線が作る平面はXZ平面です。この平面は、点A を含む、法線ベクトル (0, 1, 0) の面と表されます。式では、y=0 と表されます。平面の式の係数L=0、M=1、N=0、O=0 で、式に現れない x、z は任意の値だと言うことのようです。
y=0 で表される平面を、点Aにおける法線を軸に、時計回りにα回転した平面は、点A、Sを含み、その法線の向きはα回転しています。
任意の直線の周りの回転は、各軸の周りの回転を組み合わせて行います。
直線や平面を表す方向ベクトルは、逆向きでも良いですし、始点や含む点にも制約はありません。これらの回転を整然と説明することができないので、かつて作成した回転関数に合わせて1例としたいと思います。
手順を説明するために、関数にしたものを掲げます。
|
緯度0° から 90° を考えます。方位角も0° から 90° を考えます。方位角による曲率の変化は、この範囲が分かれば、後は東西、南北に折り返して同じです。
方位角を15°刻みに計算すると以下のようになります。
|
下図の2つの平面は、XZ平面と、点Aにおける方位角45°の法面です。XZ平面は点Aを通る経線の作る平面と同じです。
点Aにおける方位角45°の法面には、垂直截線を青で描きました。オレンジ色の楕円は垂直截線をXY平面まで回転したものです。
スクリプトを説明すると、更成緯度βを求めて、緯度φに相当する地点AのXYZ座標A、法線とZ軸の交点Sを求めます。
Normal は、直線ASです。
点Aを通る経線はXZ平面上にあります。XZ平面上の点(0,0,1)を、方位角azだけ、直線ASの周りに回転します。
その点と、点A、Sの3点で決まる平面PSは、方位角azの法面で、この面による断面が曲率を与える垂直截線です。
垂直截線は、回転楕円体の式と、法面の式からzを消去して、XY平面に投影した楕円の式を得ることで描きます。したがって、法面が赤道面に垂直の場合は計算できません。XY平面に投影した楕円の式を満たす点列を生成して、法面の式からzを計算することで、垂直截線を法面に描くことができます。
qcは、XY平面に投影した楕円の式の係数で、xyは、その楕円の標準形を求めて発生させた楕円の周上の点列です。5点あれば良いのですが、0から360°を等分して、最初は0°、最後は360°となるので、最後を除いて使います。
ILは、法面と赤道面の交線です。wは、法面と赤道面の成す角です。
xyを-w回転して、XY平面に重ねます。この際、点Aの座標も回転します。正しければ、回転結果のzが全てゼロになっているはずです。
XY平面まで回転した方位角45°の垂直截線を描くと左図のようになります。楕円の曲率半径は、式1.1によるので、標準形の楕円の長軸上の長さxから計算します。 | |
準拠楕円体は赤道半径と扁平率で与えられた回転楕円体です。赤道は真円です。経線は全て同じ楕円を描きます。ある地点の曲率は緯度だけで決まります。 経線が描く楕円の長軸半径は赤道半径です。短軸半径は極半径で、21384.6859 m だけ赤道より短くなっています。 曲率半径が最も長いのは極で、6399593.6259 m と算出されます。曲率半径が最も短いのは赤道上の南北方向で、6335439.3271 m となります。差は、64154.2987 m です。 平面直角座標9系の原点の緯度36°における方位角と曲率半径は左図のようになります。 |
東西の卯酉線曲率半径は、6385525.6607 m で最も長く、南北方向の子午線曲率半径が最も短い、6357482.4375 m となります。差は、28043.2232 m です。
平均曲率半径は、2つの値の幾何平均で、6371488.6206 m です。
この2つの値の単純平均は、6371504.0491 m で、15°刻みの7方向の単純平均は、6371490.8247 m となります。1° 刻みの単純平均は、6371488.7901 m でした。0.1°、0.01° 刻みを計算すると、それぞれ、6371488.6377 m、6371488.6223 m となって、卯酉線曲率半径と子午線曲率半径の幾何平均に近づきます。